地震保険制度PT(財務省)報告書から
- 2013-01-13(18:25) /
- 損害保険
昨日、火災保険のご説明の際に東日本大震災以降の地震保険制度の動向について
ご質問をお受けしました。
1/13現在、地震保険制度において、東日本大震災を踏まえた補償内容や
保険料の見直しはまだ行われておりません。
しかし、2012年4月、財務省により
「地震保険制度に関するプロジェクトチーム(PT)」が設置されて以降、
昨年11月までに12回の討議を経て、PTとして提言を取りまとめた
「地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書」が公表されています。
(PTは11月末をもって終了となっています)
今回は、その報告書の内容から今後の地震保険制度の方向性をお話したいと
思います。
この報告書は、地震保険制度の「総論」「強靭性」「商品性」「保険料率」の
項目に分けられ、それぞれに「喫緊の課題」「速やかに対応すべき課題」
「引き続き議論すべき課題」と時間的な優先順位がつけられていますが、
今回は、個人の方の関心が強いと思われる「商品性」と「保険料率」に
絞ってみていきたいと思います。
(商品性)
〇 損害区分 損害区分については、迅速な支払のため現在3区分としており、
僅かな損壊割合の差で保険金に大きな格差が出る懸念があります。
今後は、迅速性への悪影響や査定を巡る苦情増加等の懸念の解消を前提した
損害区分の細分化が図られると思われます。
〇 マンション 戸建住宅との公平性や査定の迅速性に配慮しつつ、マンション固有の特性に
問題 対する査定のあり方について要検討
〇 付保割合 現在付保割合は、火災保険金額の30~50%となっておりますが、
リスク量等の増大を回避しつつ、付保割合を引き上げる一方策として、
「付保割合100%、全損のみ」オプションの導入があげられておりますが、
消費者に困難な選択を迫ることになりかねないとして、引き続きの議論と
なっています。
(保険料率)
〇 保険料率 保険料率は(準備金の回復ではなく)あくまでも将来の地震リスクに
見直しの 基づくものでなければならない。
前提 改定理由を加入者に十分に説明することが必要。
〇 等地区分 現在リスクに応じて等地区分(現行4区分)による料率格差があるが、
震源モデル見直しによる更なる格差拡大の可能性あり。
〇 耐震割引 耐震化のインセンティブ強化のため、耐震割引にメリハリを
効かせる
〇 立地割増 リスクコントロール機能向上のためには、立地によるリスク
立地割引 (地盤特性による揺れ・液状化リスク、沿岸部の津波リスク等)を料率に
反映させることが望ましいが、リスク算出の信頼性を高めることが前提で
あり、引き続き議論が必要。
このように、おおまかな方向性についてはまとめられているものの、
具体的な内容の決定までには、この報告書の提言のもと、財務省により、
具体的な地震保険制度の見直し案が作成されることになります。
報告書の内容がそのまま改定内容となるわけではありません。
地震は、いつ・どこで・どの規模で起きるかがわからない災害であり、
その発生確率から保険料をはじき出す保険には、そもそもなじまないリスクです。
そのため、地震保険は他の一般の保険とは異なり、私たちの支払う地震保険料のほとんどが
民間損保会社だけでなく再保険の引き受け手である政府においても長年にわたりプールされ、
将来の地震保険金の支払いに備える仕組みとして維持されてきました。
東日本大震災で支払われた地震保険金は、78万件、1兆2,000億円もの巨額でかつ
膨大な件数の保険金がきわめて短期間に支払われ、約2兆3,000億円あった責任準備金は
半減しました。
首都直下地震や東海・東南海・南海地震などの大きな被害が想定される地震の発生が
予測されているなか、
こうした地震が起きた場合でも、地震保険制度が健全に維持されるように
国民の安心感と制度にかかる負荷とのバランスを勘案して有効な見直しをしていただきたい
と思います。
地震保険制度の維持には、先に述べた理由により、国の関与が不可避なのですから。
詳しくは、下記を参照ください↓
財務省HP 地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書(平成24年11月30日)
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/jisinpt/report/20121130_00.html
地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書のポイント
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/jisinpt/report/20121130_02.pdf
ご質問をお受けしました。
1/13現在、地震保険制度において、東日本大震災を踏まえた補償内容や
保険料の見直しはまだ行われておりません。
しかし、2012年4月、財務省により
「地震保険制度に関するプロジェクトチーム(PT)」が設置されて以降、
昨年11月までに12回の討議を経て、PTとして提言を取りまとめた
「地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書」が公表されています。
(PTは11月末をもって終了となっています)
今回は、その報告書の内容から今後の地震保険制度の方向性をお話したいと
思います。
この報告書は、地震保険制度の「総論」「強靭性」「商品性」「保険料率」の
項目に分けられ、それぞれに「喫緊の課題」「速やかに対応すべき課題」
「引き続き議論すべき課題」と時間的な優先順位がつけられていますが、
今回は、個人の方の関心が強いと思われる「商品性」と「保険料率」に
絞ってみていきたいと思います。
(商品性)
〇 損害区分 損害区分については、迅速な支払のため現在3区分としており、
僅かな損壊割合の差で保険金に大きな格差が出る懸念があります。
今後は、迅速性への悪影響や査定を巡る苦情増加等の懸念の解消を前提した
損害区分の細分化が図られると思われます。
〇 マンション 戸建住宅との公平性や査定の迅速性に配慮しつつ、マンション固有の特性に
問題 対する査定のあり方について要検討
〇 付保割合 現在付保割合は、火災保険金額の30~50%となっておりますが、
リスク量等の増大を回避しつつ、付保割合を引き上げる一方策として、
「付保割合100%、全損のみ」オプションの導入があげられておりますが、
消費者に困難な選択を迫ることになりかねないとして、引き続きの議論と
なっています。
(保険料率)
〇 保険料率 保険料率は(準備金の回復ではなく)あくまでも将来の地震リスクに
見直しの 基づくものでなければならない。
前提 改定理由を加入者に十分に説明することが必要。
〇 等地区分 現在リスクに応じて等地区分(現行4区分)による料率格差があるが、
震源モデル見直しによる更なる格差拡大の可能性あり。
〇 耐震割引 耐震化のインセンティブ強化のため、耐震割引にメリハリを
効かせる
〇 立地割増 リスクコントロール機能向上のためには、立地によるリスク
立地割引 (地盤特性による揺れ・液状化リスク、沿岸部の津波リスク等)を料率に
反映させることが望ましいが、リスク算出の信頼性を高めることが前提で
あり、引き続き議論が必要。
このように、おおまかな方向性についてはまとめられているものの、
具体的な内容の決定までには、この報告書の提言のもと、財務省により、
具体的な地震保険制度の見直し案が作成されることになります。
報告書の内容がそのまま改定内容となるわけではありません。
地震は、いつ・どこで・どの規模で起きるかがわからない災害であり、
その発生確率から保険料をはじき出す保険には、そもそもなじまないリスクです。
そのため、地震保険は他の一般の保険とは異なり、私たちの支払う地震保険料のほとんどが
民間損保会社だけでなく再保険の引き受け手である政府においても長年にわたりプールされ、
将来の地震保険金の支払いに備える仕組みとして維持されてきました。
東日本大震災で支払われた地震保険金は、78万件、1兆2,000億円もの巨額でかつ
膨大な件数の保険金がきわめて短期間に支払われ、約2兆3,000億円あった責任準備金は
半減しました。
首都直下地震や東海・東南海・南海地震などの大きな被害が想定される地震の発生が
予測されているなか、
こうした地震が起きた場合でも、地震保険制度が健全に維持されるように
国民の安心感と制度にかかる負荷とのバランスを勘案して有効な見直しをしていただきたい
と思います。
地震保険制度の維持には、先に述べた理由により、国の関与が不可避なのですから。
詳しくは、下記を参照ください↓
財務省HP 地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書(平成24年11月30日)
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/jisinpt/report/20121130_00.html
地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書のポイント
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/jisinpt/report/20121130_02.pdf
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